東京高等裁判所 昭和27年(う)1660号 判決 1952年10月04日
控訴人 原審検察官
被告人 高見雄幸
弁護人 金原政太郎
検察官 伊東勝関与
主文
本件控訴を棄却する。
理由
本件控訴の趣意は検察官提出の控訴趣意書の通りであり之に対する答弁は弁護人金原政太郎提出の答弁書に記載された通りである。而して当裁判所の判断は左の通りである。
論旨は原判決は法令の解釈適用に誤があり、其の誤が判決に影響を及すことが明かであるから破棄を免れないと主張するのである。
よつて按ずるに本件公訴事実は、「被告人は昭和二十六年九月二十三日頃から東京都台東区下谷竹町四十一番地島田義雄方に於て競輪予想ダービー社(本店)を経営し順次同区上根岸町四十九番地田中誠之助方及び埼玉県北足立郡蕨町旭町五丁目四千六百六十八番地刈谷辰一方に右ダービ社支店を開設して来たが、同年十一月七日右三個所の本店及び支店に於て朴性云、伊藤カズ子外数名の事務員を使用し竹内盛市外多数人から後楽園競輪に於ける連勝式勝者投票券六百五十余枚の購入方の依頼を受け同券一枚につき代金百円及び手数料十円を受取り之と引換えに右購入依頼者に対して代金領収証及び払戻金引換証の趣旨からレース番号、連勝式番号及び其の枚数を記載した伝票を発行交付し払戻金千円以上の場合には五分の謝礼金を徴し以て自転者競走施行者の為す勝者投票券発売と類似の行為を為したものである。」というのであり、原審の見解は、「被告人はその使用人を通じて各本店及び支店で不特定多数の客から自転車競走の連勝者投票券購入の依頼を受け、客の希望するレース番号と連勝式と枚数を聞きとり、直にそれ等と各客の名前、年月日とを複写式伝票に記入し、客からは勝者投票券購入代金と外に手数料として右代金の一割に当る金員を受け取り、それと引換えに「本命が欠場の場合も車券は購入致します。」と記載ある右伝票の一枚を、勝者投票購入受託及現金の預り証と的中の際の払戻相当金支払の引換証の趣旨で客に交付し、一方予め現金十万円を持たせ後楽園等レースの行われる自転車競技場へ赴かしめておいた使用人等と電話で連絡し客の注文に応ずる勝者投票券を各レース毎に現場で購入させ、各レース終了毎にその結果を電話で本店に報告させ現場で的中者分の払戻金を受けとらせると共に、本店又は支店で、的中勝者投票券の購入依頼者中の希望者には現場で受け取ると同額の払戻相当金を交付した伝票と引換えに立替払し、その際払戻金が千円を超える場合のみその内から更に予想的中の謝礼金として五分の割合の金額を受けとつていたものであり、昭和二十六年十一月七日にも右方法で営業して竹内盛市外多数の客から後楽園自転車競技に於ける連勝式勝者投票券約六百五十枚の購入依頼を受け、前記の如き伝票を交付していた」ことは認め得るが、斯の如きは要するに多数の勝者投票券の購入希望者から依頼を受けて、投票券を正規の発売所から買受けてやり、的中者については代理して払戻金を正規の払戻所から受取つてやるのみの行為であり、これ等の代理行為に対して予め約束した一定の手数料を受け取つただけのものであつて、右行為は営利目的を以て不特定多数人から勝者投票券の購入の委託を受けて之を履行したに過ぎないので、其の際被告人が前記認定の様な伝票を委託者に交付したことにより勝者投票券発売類似の行為をしたものと云うことはできない。被告人の所為は本来取締の必要あることは認められるが、投票券の購入の委託を受ける営業行為乃至購入の取次行為に対する罰則を欠く現行法の下に於ては之を処罰することはできない、よつて被告人に対しては無罪を言渡すべきものであるというのである。
而して記録を精査するに右原審の事実認定については事実誤認ありとは認められないのであり、該事実認定を前提とし、被告人は不特定多数人から車券購入の委託の趣旨に従い車券を現実に購入し、競技の結果的中者については払戻金を代理して受取つたに過ぎないものであると認むべきものである以上たとえ前記の如き伝票を交付した事実があり委託者の一部の者が之を車券と殆んど同視していたとしても之を法に所謂勝者投票券類似のものを発売したものとすることはできない。
論旨は本件被告人の行為を以て車券発売類似の行為でないとするならば他に之に該当する例は殆んど考え得られないであろうというが、両者の場合を別に観念し得べきものであることは本件以後昭和二十七年六月三十日法律第二百二十号により改正された自転車競技法第一条第三項には「競輪施行者以外車券其の他これに類似するものを発売して自転車競争を行つてはならない」と規定する一方第十九条第二項に於て新に「業として車券の購入の委託を受け又は財産上の利益を図る目的を以て不特定多数の者から車券の購入の委託を受けた者」を罰する旨規定したことによつてもわかる。尤も右改正法律は昭和二十七年七月一日以降実施されたものであつて本件行為に適用し得べきものでないことは言をまたない。結局原判決には法律の解釈適用について誤りはなく、本件控訴は理由なきに帰するから刑事訴訟法第三百九十六条に則り之を棄却すべきものと認め、主文の通り判決する。
(裁判長判事 藤嶋利郎 判事 飯田一郎 判事 井波七郎)
控訴趣意
原判決は法令の解釈適用に誤があつて、其の誤が判決に影響を及ぼすことが明らかである。
原判決は、「被告は昭和二十六年九月二十三日頃から同年十一月七日まで、前記公訴事実記載のとおりの本店及び支店を設けて競輪予想ダービー社を経営していたこと、その競輪予想ダービー社の営業方法は、被告人がその使用人を通じて各本店及び支店で不特定多数の客から自転車競走の連勝式勝者投票券購入の依頼を受け、客の希望するレース番号と連勝番号と枚数を聞きとり、直にそれらと各客の名前年月日とを複写式伝票に記入し、客からは勝者投票券購入代金と外に手数料として右代金の一割に当る金員を受け取り、それと引換えに「本命が欠場の場合でも車券は構(購の誤字)入致します」と記載ある右伝票の一枚を、勝者投票購入受託及現金の預り証と的中の際の払戻金支払の引換証の趣旨で客に交付し、一方予かじめ現金十万円を持たせて、後楽園、花月園、京王閣、大宮、村山、川崎、立川等の当日レースの行われる自転車競技場へ赴かしめておいた使用人南重龍等と電話で連絡し、右客の注文に応ずる勝者投票券を各レース毎に現場で購入させ、各レース終了毎にその結果を電話で本店に報告させ、右南等をして現場で的中者分の払戻金を受けとらせると共に、本店又は支店で、的中勝者投票券の購入依頼者中希望者には、現場で受けとると同額の払戻金を、前に交付した伝票と引換えに立替払い渡し、その際払戻金が千円を超える場合のみその内から更に予想的中の謝礼金として五分の割合の金額を受けとつていたものであり、昭和二十六年十一月七日にも、右方法で営業して竹内盛市外多数の客から後楽園自転車競技における連勝式勝者投票券約六百五十枚の購入依頼を受け、前掲記の如き伝票を交付していた事実を認めることができる」とし、公訴事実と同一趣旨の事実を認定し乍ら、右の様な被告人の行為は「営利の目的をもつて不特定多数人から勝者投票券の購入の委託を受けてそれを履行したに過ぎない。被告人及購入委託者の主観的意思から云つても客観的行為の態様から云つても、それは投票券購入方の委託受託の関係であつて、其の際被告人が前記認定の様な伝票を委託者に交付したことにより勝者投票券発売類似の行為をしたものと云うことは出来ないし、又それは何等自転車競走施行者の収益を害するものでなく、自転車競技の公正や秩序を害するものでもなく、且つまた自ら賭博的行為をもなすものでもない」という理由で自転車競技法第十四条第一号後段にいう勝者投票券発売類似の行為に該当しないものとして無罪を言渡した。併し乍ら本件公訴事実は同法第十四条第一号後段にいう発売類似の行為に該当するものであると信ずるのであつて、以下に其の理由を述べる。
原判決は被告人の本件行為即ち客の注文によつて伝票を発行しこれと引換に払戻金を支払う行為は営利の目的を以て不特定多数人から勝者投票券を購入の委託を受けてそれを履行したに過ぎないものであつて、被告人と客(原判決の謂う購入委託者のこと、以下客と称す)との間の関係は投票券購入方の委託受託の関係であり、従つて自転車競技法第十四条第一号後段にいう発売類似の行為に該当しないものであると判示しているが、それは右行為の私法的な法律関係を明確にすることに急であつて結局刑罰法令としての同法条の解釈適用を誤つたものと断ぜざるを得ない。被告人は、原判決でも認めているように、営業として右の様な行為を行うに当り、客より投棄券購入の依頼を受ける都度、購入代金の外に手数料を受取るとともにこれと引換えに客に対し其の希望するレース番号と連勝番号、枚数等を記載した複写式伝票の一枚を交付していたのであつて、而も営業行為の一環として不特定多数人に対してそれを行つていたのである。即ち右の様な伝票を「発行」交付していたのである。そして、其の伝票を所持しさえすれば、誰であつても、的中した場合常に其の伝票と引換えに被告人方店舗より払戻金の交付を受け得られることとなつていたのである。其の為投票券自体の授受は全く無視され、従つて、的中した投票券は客に渡されることなく前記の使用人南重龍等が直接現場で其の分の払戻を受けて之を金に換え(原判決、記録第二百二十四丁裏四、五行目)、又的中しなかつた投票券は最初は右の者等が現場から持帰つていたが其の投票券を要求する客が実際上皆無であり又常識上も皆無であると考えられたので後にはそれを現場で直に破棄してしまつていたのであつて(原審公判廷に於ける証人南重龍の供述、記録第百六十九丁裏)、客との関係においては被告人の発行した伝票のみがこれに代るものとして通用し、全く投票券と同一の機能を営んでいたものと認めることができる。このことは、原審で採用された客に対する司法警察職員の供述調書によれば客の殆ど全部が被告人方の店舗で車券を買つて貰つたというのではなくして車券を売つて貰つたとか車券を買つたという供述の記載があるばかりでなく、其の調書中に、「御手入の際車券売場の現場の女事務員に云々」(山口ひでの供述調書、記録第百七丁)、「(被告人方店舗で)車券を売つていることを知り」(杉山喜代吉、同第百九丁)、「競輪場の券を売つている処で後楽園の車券を買つたことについて云々」「伝票即ち車券を云々」(竹内盛市、同第百十三丁)、「竹町で競輪競馬の車券を売つているのを知つていたのでなぐさみに買はふと思つて立寄つて車券売場に入つて行つたら」(本田源蔵、同第百十四丁)、「競輪の車券を売つているので私も買つてみたくなり云々」「当れば現場の配当と同じですが」(小松ハツエ、同第百十五丁、)「前に一回買つた事のある車券売場に大勢人が居たので云々」(山本幹男、同第百二十三丁)、「後楽園の車券を売つているという事を聞いて買つて見ようと思つて出掛けて行つた」(斎藤元太郎、同第百二十四丁)、「私は昨日後楽園競輪場で知り合いの人から鶯谷駅のそばで場外車券を売つている所があるという事を聞きましたので云々」(斎藤芳三、同第百三十四丁)等の記載があることによつても明らかである。客としても被告人の発行せる伝票を以て投票券と同じものとして観念し、又被告人方店舗を以て場外車券売場と同一に観念していたのであり、客との関係においては被告人が発行した本件伝票は正規の投票券と全く同一の機能を有していたことは明白である。しかるに、原判決は、叙上の如き伝票の経済的乃至社会的機能を有する実体を看過し、被告人の右行為が私法的法律関係において、特定の少数者より個人的に或いは無償で投票券購入の委託を受けてそれを履行する行為と何等異るところがないとの一事を以て両者を全く同等に評価し、本件被告人の行為に対し前記法条の適用なきものと断じたことは、到底人をして納得せしめる所以のものではない。そもそも自転車競技法第十四条第一号後段にいうこれに(発売)類似の行為とは、正規の投票券ではなくてそれに類似する券を発売する場合は勿論、私法上売買と認められない行為であつても発売と同視すべき即ちこれと同等の経済的乃至社会的機能の認められる行為をも広く包含するものと解すべきである。しかして被告人の本件伝票発行行為を見るにその対象は不特定且つ多数人であり而も営業的になされているのみならずその伝票自体が機能的に投票券と全く同様に客から取扱われているのであつて、これらの点を彼此綜合して観察すれば、正に右法条投票券発売の類似行為に該当するものと解せざるを得ない。若し本件被告人の右の様な行為を以て発売類似の行為に該当しないものとするならば、他に之に該当する例を殆ど考え得られないであろう。恐らく同法第十四条第一号違反が問題にされるのは、僅かに法定の自転車競走施行者の行う自転車競走に際し施行者と並んで施行者とは独自に投票券を発売する場合又は投票券を発行しないでそれと同様な行為を行う場合等であろうが其の中第一号後段の発売類似の行為が問題にされるのは主として投票券を発行しないで行う後者の場合のみであると考える。そしてこの後者の場合において、若し業として其の行為が行われる限り、仮令形式的に投票券の形をとらなくても、そこには何等かの(例えば伝票形式の如き)有形的なものが授受されるのが普通である。而して有形的なものが授受せられ、それが、投票券と同一の作用を為すとみられ且つ客との間に私法上売買関係がとられる場合は一応類似行為と見るべきである。然らざる場合といえば正に本件被告人の行為が想定されるのであつて以上二つの形体を除いて他に同法第十四条第一号後段にいう類似行為に該当する行為を殆ど考え得られないのである。更に本件被告人の行為は自転車競走に関する公正と秩序並びに法定の自転車競走施行者の収益にとつて極めて危険な行為ですらあるのである。原判決は同法第十四条第一号の規定を論じ、其の規定は自転車競技法の趣旨に従い「勝者投票券の発売又はその類似行為により直接又は間接に法定の自転車競走施行者の正当な収入を減少させ、或いは自転車競走の公正と秩序を害する等の場合に限定して解しなければならない」という。之はまことにその通りである。併し乍ら自転車競走の公正と秩序ということは単なるレース場合に於ける公正と秩序ということだけではない。元来場外車券売場が開設され其所で投票券が取引されるということは、場内で投票券が発売される場合と異り、競技が無視され唯単に的中丈を目的として投票券が取引されるという意味で、純然たる賭博的行為だけが行われるということになるのである。これは自転車競走そのものの公正と秩序の維持という面からだけみても甚だ好ましくないことで、この為に法定の自転車競走施行者と雖も一定の許された場合でなければ場外車券売場を開設し得ないこととなつているのである。私人が自由に街頭でかかる場外車券売場を開設し得るとするならば、自転車競走に関する秩序は全く破壊されるに至るであろう。然るに本件に於て被告人が伝票を発行していたことは社会観念上又経済上投票券を発売するのと同一機能を有し、従つて被告人は私に場外車券売場を開設するのと同一の結果に立至つていたのであつて、其の行為が自転車競走に関する公正と秩序とを害するものであることは明白である。のみならず被告人の行為は原判決自身が認める様に所謂「呑行為」の危険性を多分に有するものであつて、自転車競走施行者の収入を減少させる危険性を多分に帯有するものである。本件に於ても被告人が「呑行為」を行つていたことを推察或いは疑わしめる事情、例えば伝票、売上げの一覧表等営業に関し証憑となるべきものを一切其の日限りで破棄してしまつていたこと(被告人に対する検察官及び司法警察員作成の供述調書中供述記載、記録第二百六丁裏、百九十七丁裏)、被告人の営業による利益金が僅か一ケ月余の期間で三十余万円にも上つたということ(被告人に対する前掲検察官調書、記録第二百六丁表)等の事情が多多存する。そして逆に「呑行為を行つていなかつたという積極的な証拠は何一つ存しない。昭和二十五年以来近畿一円に於て本件と同一形態の私設店舗約千五百軒が出現し、為に社会風教上由由しき問題となると共に近畿の自転車競走施行者の売上げが激減したことは当時新聞紙上にも報道せられ顕著な事実となつている。以上の点よりみても被告人の行為は、自転車競技法第十四条第一号の規定の目的からして同条第一号後段にいう類似行為として取締りを必要とするものであることは明らかである。
以上要するに本件公訴事実が自転車競技法第十四条第一号後段にいう発売類似の行為に該当することは明白である。昭和二十五年六月三十日附法務府検務局長の自転車競技法違反営業の取締についての通牒(検務第一八六九三号)並びに同年十一月四日言渡された神戸地方裁判所の本件と全く同様の事案に対する有罪判決の趣旨とする所も亦以上述べた点にあると思われる。然るに原判決は法令の解釈を誤り本件公訴事実を以て発売類似の行為に該当しないとし、同条第一号の規定を適用しなかつたものであり、法令の適用に誤があつて、且つ其の誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れないと信ずる。
弁護人金原政太郎の答弁書
第一点原判決には法令の解釈適用に誤りはない。原判決は被告人が「不特定多数人から自転車競走の勝者投票券の購入の委託を受けてその投票券を購入した」事実(起訴状記載の公訴事実と同旨)を認定した。而して自転車競技法においては右認定事実を禁止する旨を規定しない。従つて右認定事実は犯罪を構成するものでないこと多言を須いるまでもないのである。
第二点検察官は被告人が「勝者投票券購入委託者」に対して交付した伝票を以て自転車競技法第十四条第一号後段所定の投票券発売類似の行為に該当すると主張するが同法が規定する禁止行為は、自転車競走施行者でない者が自転車競走に便乗して勝者投票券又は投票券類似の証券を発売する行為である。従つてその所定の行為は所謂呑み行為を伴うのが常態であつて、之を禁ずる法意は蓋し自転車競走に便乗して行われる賭博行為の禁止にある。本件においては被告人は委託者に従つて勝者投票券購入を為したに過ぎない。そして委託者との間の受託事務整理の為めに伝票を記載したに過ぎないのである。原判決は「斯様な方法は呑み行為を為す危険性を含む」と判断されたが本件の訴因は「被告人の呑み行為」を含むものではなく、被告人は毫も委託事務処理について不正を行つてはいないこと原判決認定の通りである。只、被告人が行つた受託行為は自転車競走における投票券発売の時機が競走発走の直前である関係上、之を購入して委託者に引渡す以前に既にその競走が終了して勝者投票券の払戻が開始されるから、投票券を購入し持ち帰つて委託者に交付するよりも、その払戻金を委託者に交付する方が便宜であり委託者に対し親切でもあるので、そのように取扱つていた、そこで委託者との間に委託事項の紛争の起ることを防止するために伝票に委託要旨を書いて之を委託者に渡し之を以て受託の証拠にしたのである。之を要するに原判決には事実認定法律適用の何れにも一点の違法もない。
第三点或行為を取締る必要があるということは立法事項である。取締の必要のために之に該当しない法条を索引し且歪曲した解釈の下に公訴を維持することは罪刑法定主義に反する。正しい法の判断による処罰でないならばその処罰が厳重であればある程、法の威信を失い民心離散することは茲に言を要しないことである。之の意味に於ても控訴の趣旨は全く失当であると信ずる。